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空きっ腹に酒

  • nishi-kaze
  • 2016年3月27日
  • 読了時間: 14分

2016年3月、Mini Album『人の気持ち』をリリースした空きっ腹に酒。若いながらも着実にキャリアを重ねてきた空きっ腹に酒は今、積み上げてきた自信と、未だ擦り減らない新鮮さの両方を持ち合わせていて、だからこそ可能な挑戦が今作でも発揮されている。リリースから数日たった某日、聴き応え十分の今作について語ってもらった。

Interview:Miyaco/Photo:MiNORU OBARA

―まずは、リリースおめでとうございます。

全員:ありがとうございます。

―発売されて少し経ちましたが、周りのリアクションは返って来ていますか?

西田:ツイッターとかを見てると、好評っぽいです(笑)。

田中:周りの人達にはリリース前から聴いてもらったりコメントもらったりしてたので、その時点ではある程度反応はあったけど、お客さんの反応はエゴサーチしてやっと分かるくらいかな(笑)。

―まだライブでは披露されてないんですね。

田中:まだですね。

シンディ:前回はLIVEで一度演奏したものをパッケージされているんですけど、今回はまだ一回も披露してないので。だけど、ネットとか見てる限りは良い感じですね。

―今後、ライブで演奏した時のダイレクトな反応も楽しみですね。シンディさんは前作(4th Album『愛と哲学』)リリースの直前に加入されたということで、今作に関しては前作よりも密に制作に関われた面があるのかなと思ったんですが。

シンディ:そうですね、それは今言っていただいた通りで、今回のミニアルバムを出すって決まった時から曲作りに参加してるので。西田の作った曲でも構成を提案をしたり、3曲目の“sence”って曲は僕が作ったんですけど、それもアイデアを交換しながらできたんで。だから自分がもともと持ってた音楽性を、今の空きっ腹に酒にうまく落とし込めたんじゃないかなって思ってます。

―皆さんはどうですか?シンディさんが入られて、今回はこの4人で制作できた最初の作品になったっていう実感はありますか?

西田:うん、本当にそうですね。

田中:シンディには本当に申し訳ないけど、サポートしてくれるまでシンディがどんなベーシストかって知らなくて。だから知り合って1年経たないくらいの状況で、これだけ深く理解したっていうか、これはシンディっぽいなっていう感触が伝わってくるというか。シンディが作った曲も「シンディさんが作ったっぽい」ってインターネットに書いてる人がいて。なんで分かるんやろうって思うんですけど(笑)。

西田:確かに、シンディのやってる他のバンドを知らんくても「これがシンディさんが作った曲なんだろうな」って予想がつくくらい今までの空きっ腹に酒とは違った感じが出てるのかもしれない。

シンディ:僕は正直ちょっと心配だったんです。ちょっと毛色の違う曲もあるし、もともとの色が濃い曲もあるし、カバー曲もあるし。だから、どんな感じの反応が返ってくるのか不安だったというか。リリースしてから数日経って、いろんなところで展開してもらってるから、このアルバムをきっかけに初めて空きっ腹に酒を知ってくれる人もいて。この作品で「空きっ腹に酒っていいやん」って思ってくれてるっていうのは嬉しいです。あとは、昔からのファンも受け入れてくれてるんかなっていう反応は見えてるんで良かったです。

西田:基本的に昔から結構いろんなことをやってきてて。これは一体どういうことなんだ、っていう曲を出したりもしてたんで。昔の話になっちゃうけど、1st アルバム(『僕の血』)に“空洞”っていう曲があって、それも最初スタジオでやった時には一体どこに向かってるんだっていう話になったんです(笑)。だけど、出したら結局「それが空きっ腹に酒や」ってなったし。なんでもやって来た感はあるから、今回もそうやったんやろうなって思います。

―新しい風は吹いたけど、違和感は全くなく。

西田:そうですね。

―それ以外に、今回挑戦したことはありますか?

田中:“夜のベイビー”のカバーですね。

シンディ:うん、それとフューチャリングかな。

田中:FUNKYMIC(ex.韻シスト)さんは原曲でもフューチャリングされてるから絶対この曲に欠かされへんなと。個人的にはヒップホップを聴いて育ってきたし、地元でも友達と(ヒップホップを)ずっとやってきたから、自分がロックバンドを始めた時は、申し訳ないって言うとちょっと違うけど、そことヒップホップは分けてやりたいと思ってて。ラップはやるけどヒップホップをやってるとは思ってなくてロックバンドの人間だと思って生きてきたんです。でも今回、ヒップホップど真ん中のFUNKYMICさんがフューチャリングしてくれて、やっと自分の中でちょっと許せたというか。ヒップホップの畑の人と一緒にやれるくらいのバンドに成長できたかなって思います。それこそジャンルレスじゃないけど、そのくらいまでやれるようになってきたんかなって。

―個人的にはちょっと意外な選曲に感じたんです、どんなカバーになるのかなと思っていて。聴いてみたら、原曲のキラキラしたところは残ってるけど、原曲よりもキレキレな部分もあってそれが空きっ腹に酒っぽさに感じられて。とてもいいカバーだなって思いました。

田中:うん、それは意識したかな。

西田:空きっ腹に酒っぽくしようとは思いました。

シンディ:何回も聴いてたら、自分達のプレーの個性が自然と詰まってるんやなって思いましたね。

田中:ラップに関しては完全に書き直したし、サビもちょっとだけ変えたんですけど。原曲の方はアーティスト目線で書いてあって、今日の夜を楽しませてあげるっていう内容で。カバーするんだったら目線を変えたいなって思って、お客さん目線で書きました。今までそんな風に書いたことなくて、お客さんの気持ちになって音楽を聴いたり書いたりっていう事が無かったから、カバーも含めて挑戦した部分と言えますね。

―若者のリアルな生活を歌われている感じがしたのは、お客さん目線だからなんですかね。

田中:そうかも。大阪でライブしてたら北海道から来ましたっていう子がいたり、他の場所に行っても遠くから来てる子がいたりして、どんな生活してんねやろって想像してしまって。そういう子たちに聞いたら「毎日バイトとか仕事がしんどいけど、今日ライブ来れてよかった、全部忘れられる」って言ってくれて。そんなつもりでバンド組んでなかったですからね。別に、今日この人の心を癒してあげようとか思ってなかったし、自分が楽しいからやり始めたことやのに、そんな風に心が動いてくれて。大変なこと始めてしまったなと思ったら、一回そういう事を歌ってみたくなりましたね。

―ラップ部分の歌詞を書き換えるのは、FUNKYMICさんと一緒に作業されたんですか?

田中:そう、スタジオで。数時間で書きあがりましたね。まず大まかなストーリーを伝えて、その場で書いて見せ合って。FUNKYMICさんは、原曲の方とごっちゃになるから覚えるの大変やって言ってたけど(笑)。他のラッパーが、フリースタイルで即興でやるっていうのは見たことあったけど、実際に作品を仕上げてるところを見たことはなかったから勉強になりましたね。

―田中さんはずっと韻シストも聴かれてたんですよね。そういう人と一緒に仕事をするのはどうでした?

田中:いきなりやってたら上手くいかんかったやろうな。今までイベントやったりリリースしたりいろんなバンドと対バンしたりして、バンドとしてそれなりに自信付けてきてたから、思ってたよりは余裕持ってできたと思います。何もない状態で、理想だけでいきなり一緒にやってたら喰われちゃってたなって(笑)。

西田:カバーなんて個性がないとできひんから。

田中:そう。だから実際一緒にやれて嬉しいっていう気持ちが一番やけど、自分達もそれくらいやれるようになって良かったなって思いましたね。

―自分達に対する発見もあったんですね。さっきも話にでていた“sence”についてお聞きしたいんですが、シンディさんは空きっ腹に酒でどういう曲を書きたいかっていうイメージはあったんですか?

シンディ:実際、何曲か空きっ腹に酒でやりたい曲のストックはあって。スタジオの途中でセッションする時に、実はメンバーには言ってないんですけど、その案をいくつか試したりもしてて。その中でたまたま嵌ったのが“sence”になったんです。拍子とかベースが今までの空きっ腹に酒にはない感じだったんで、どういう感じになるか楽しみだなと思って作っていきました。今まで僕はインストバンドをやってたんで、幸輝がどういう詞やリズムを乗せるのかっていう部分も楽しめましたね。

―この曲の歌詞では、人と分かり合うのは難しいけどそれを諦めて欲しくないっていう気持ちを歌われているのかなって感じたんですけど。

田中:これは、お客さんと俺の関係を歌ってるのかなと思うんです。ステージから見たフロアの熱気と、フロアから見上げたステージの躍動感って、目に見えてるもので判断するじゃないですか。だけどそれって結局想像で。例えばどんなに熱込めて歌ってるように見えても頭の中では晩飯の事考えてるかもしれへんし。そこは想像でしかないけど、それ以上は踏み込むべきじゃないと思うんです、何が真実であろうと。だから人の気持ちって想像でしか分からなくて。歌ってある程度形になって、それをお客さんが勝手に想像して持って帰る。でも諦めちゃうじゃないですか、CD聴かなくていいやとか、ライブ行かなくていいやとか。その時点で目に映らないし耳に入らないから、何もなくなってしまう。それは嫌だなっていう意味だと思う。書きながら気持ちも変わっていくから、今インタビューしながら反芻して考えるけど・・・実際に足を運んでもらって見てもらわないと分からない、そういう意味も込められてると思います。

―アルバムタイトルの「人の気持ち」はこの曲から来てるんですか?

田中:この曲の言葉を取ったら面白いかなと思ったし、単純に人が歌詞を書くと人の気持ちになるじゃないですか。だから当たり前のことをタイトルにしただけなんですけど。当たり前のことだけど、今回はより向き合ってるというか、人の感情を書いてるんだよっていうのを前面に出したかった。だから、メンバーもみんな良いタイトルやって言ってくれて、一発で決まったのは初めてだったんで嬉しかったです。

―今回の作品全体的に、人の気持ちを歌ってるっていうイメージがある?

田中:うん、全曲そうですね。まぁ今までのアルバムもそうなんやけど、歌詞を書きながら人の気持ちにより向き合ってみたから。今までの曲は全部僕の目線で書くばっかりやったんですけど、今回“映画”っていう曲は女性目線だったり、“夜のベイビー”はお客さんの目線だったり、“sence”でお互いの関係性とか、“サウンドオブミュージック”だったらバンドマンとして思うこととか、いろいろと考えて書きました。

―そうなんですね。その“映画”っていう曲は、歌詞の世界が凄くおもしろいなと思って。私はこの世界感が掴み切れなかったんですけど。

田中:うん、僕もつかみきれてないんで(笑)。

―まず、一人称なのか二人称なのか三人称なのかも分からなくて、この世界のどこにいる視点で聴けばいいのかも分からなくて。分からないなりにもブロックをなんとか積み上げて形を見ようとするんだけど、最後の「カメラを止めて」っていう一言で、頑張って積み上げたものをガシャンと崩されてしまって。だから、この曲のことが少しでも分かるヒントのようなものがあれば、話せる範囲で教えてもらいたんですけど。

田中:あ、でも、それでいいんやと思います。

西田:うん、なんとなくの感じが大事と言うか。

田中:「カメラを止めて」でガシャンと崩されたっていうのは僕の狙い通りで、そこで現実に戻ったっていうことやと思うんですよ。その一歩引いた「これはただのCDだ」っていう目線で見ても面白いし、そのCDの中に入ってしまってもいいし。

西田:歌詞ではっきりと言葉になってるけど抽象的な部分が強いというか。作ってて思ったのは、曲から感じるものって言葉だけじゃないじゃないですか、コードとかメロディーとかも含めて入ってくるものからなんとなく想像したものが正解やと思うんです。お客さんが勝手にインスピレーション受けて、物語を映画っぽく想像して。

田中:映画ってそういうものじゃないですか、例えばカフェで一人で飲んでて「なんか映画みたいやな」って思う瞬間があると思うんですけどそういう感じに近い。

西田:この曲の歌詞が1番まで出来た時に、自分で聴いてすごく想像しちゃって、抽象的なイメージやけどめっちゃいい曲やと思ったんです、なんとなく。その後、歌入れの時に「俺はこういうイメージやから、この歌い方はちょっと違う気がする」って話をして確認したら、やっぱり実際幸輝が書いてるものとは全然違うものを想像してて。でも、どうにでもなっちゃう感じが良いというか、どんな想像してても「カメラを止めて」っていうので現実に戻されるのは、どの人にも当てはまるんですよ。

田中:そう。まぁ、必殺技っす(笑)。

―なるほど。私はそれにまんまと嵌ってしまったわけですね(笑)。この曲はとてもメロウで大人しい印象のある曲なんですけど、どういう風にできたんですか?

西田:これは、僕がThe Steve McQueensっていうR&B調のジャジーなバンドを気に入って、そういう曲を作ってみたいなと思って、イントロを持って行って作り始めた曲ですね。

シンディ:さっきの話の延長上になるんですけど、空きっ腹に酒の曲って全部ができてからタイトルが決まるパターンと、途中でタイトルが乗るパターンがあって。この曲に関しては途中でタイトルが乗ってて、作ってる間にイメージもやっぱり映画っぽくなってたから、演奏隊もそれを意識をしたというか。

西田:そうやな、歌詞と音が影響し合って出来ていった感じがするな。

シンディ:うまいことブロックがはまったと言うか。ベースではラストのサビでぐっと上がっていく感じとかをかなり意識して弾いてます。そんなに喋らんかったけど、なんとなく意識は共有できてたんやと思いますね。

―皆さんの中になんとなくのイメージがあって、それが噛み合っていたような。

シンディ:作ってる途中で「この曲かっこいいな」って既に言ってましたからね(笑)。

田中:それは毎回どの曲も言うてる(笑)。

―他の曲に関しては結構話し合ったり確認し合ったりされるんですか?

シンディ:話してるし、喧嘩することもよくあります。

西田:絶対に両方のアイデアをやってみて、持ち帰って、考える。

シンディ:良い喧嘩と言うか、お互いの意見を通すためにお互いの事を確認して、一回寝かせて。だからブラッシュアップは絶対されてると思います。

―なるほど、そうなんですね。それから、“サウンドオブミュージック”はもの凄くイライラしてるなと思ったんですが(笑)。

全員:(笑)。

―どういう点に苛立ちを感じてますか。

田中:まぁ、歌詞で言ってる通りなんですけど、飽きたんでしょうね。自分がその場所におりたくないっていうだけで、特定のバンドがどうとかシーンが不潔だっていう訳じゃなくて。それ自体は健全で、むしろ汚いのは僕らやと思うけど、それでいいというか、はみ出していたいって思ってる。けど、ロックバンドやってるとなにかと括られるじゃないですか、それに対する苛立ちですね。でもその苛立ちがあるからこの曲が出来たし、それは背負っていくっていうか、空きっ腹に酒っていうバンドを始めて、そういう立ち位置でやっていくって決めたから。だからある意味ではテーマソングになるのかなっていう気がするんやけど。空きっ腹に酒ってこういうバンドですよ、っていう。なんでみんなそんなに仲良しこよしなんかなって思うんですよね。自分を表現する場所で他の人を持ち上げる必要もないし、だから「空きっ腹に酒かっこいいでしょ」って言ってる曲です。これ、最初はもっと歌詞も大人しかったんですよ。だけど、メンバーがもっと書けって言ってきたから歌詞も書き換えて。そしたらこの前「歌詞がひどいなぁ」って言われて、お前らがひどくしろって言ったんやんけって思ったんやけど(笑)。

―そうだったんですか(笑)。ツアーももうすぐはじまりますが、どういうツアーになりそうですか?

シンディ:前回は最後にワンマンもあって、それが初めての経験でしたけど、今回は毎回ツーマンで、自分達が強敵だと思ってるバンドばかり呼んでるんで気合いは入ってますね。

田中:対バンならではのバチバチした感じが出せたらいいな。オープニングアクトが、広島のペロペロしてやりたいわズ。なんです。

―そう、彼女達が全公演に出演するんですよね?広島の人間としてはとても見過ごせない気がしてます。

田中:そうです、全公演。だから広島は期待してます、さぞたくさんお客さんを呼んでくれるだろうと・・・(笑)。

シンディ:でも、先輩面してますけど、7公演全部観られると思ったらやっぱり気持ちがシュッとしますね。お客さんももちろんなんですけど、毎回出てくれるっていうのは、そこにも勝たないといけないっていう気持ちもありますね。

―そうなんですね、その辺りも楽しみにしています。ありがとうございました。

 

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¥1,500(+tax)/AOME-0012

『人の気持ち』01.わがままで都合がいい 02.映画 03.sence 04.ハッピー 05.サウンドオブミュージック 06.夜のベイビー feat.Funkymic

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