Qaijff
- nishi-kaze
- 2016年5月28日
- 読了時間: 9分

森彩乃の突き抜けるような歌声がポップな印象を与えてくれるQaijff(クアイフ)。4月13日にリリースされた『Life is Wonderful』は希望を感じさせてくれるアルバムだ。しかしよく聴けばその根底にはネガティブな感情も内包されていることに気付く。
私達の生活は悲しいことや惨めなことのオンパレードで、だからこそ、未来への活力になるような希望を見つけたくなるのだ。彼らは、そういったネガティブな部分もちゃんと解釈した上で歌ってくれている。だからこそ今作には、決して空想ではない、「地に足の着いた希望」を感じることが出来るのだと思う。
メンバー3人が、バンドのこと、今作で歌っていることなど、たくさん話してくれました。
Interview:Miyaco/Photo:MiNORU OBARA
―ピアノの音が入ってると繊細な印象も受けるんですけど、ライブだとアグレッシブな印象がありますね。ライブで違う魅力を見せてくれるバンドだなと思いました。
全員:ありがとうございます。
―広島には何度か来られてますよね。遊んだりできてますか?
内田:打ち上げとかでは結構(笑)。
森:そうだね、観光とかは出来てないね。
―広島の印象ってありますか?
内田:結構ラフに待っててくれるというか。名古屋だとこっちから迎えに行く感じの時もあるけど。
森:名古屋の県民性というか(笑)。
―名古屋もそうかもしれないんですけど、広島もお客さんがシビアだって言われることが多くて。
森:あ、そうなんですか。
内田:それはあまり感じなかったですね。
森:そうだね、ずっと名古屋でやってるからかな(笑)。
三輪:知らない間に鍛えられるのかもしれないね(笑)。
―プロフィールを拝見しました。森さんはずっとクラシックピアノをされていたとのことですが、どうしてこの音楽に辿り着いたんでしょうか。
森:ピアノは4歳くらいからやってたんですけど、高校3年生くらいの時にバンド系の音楽に急激にはまった時期があって。ピアノ専攻で音大に行ってたので、ピアノは続けてたんですけど辞めたい時期もあって、ギターをやってみた時期もあったんですけど、今はピアノに戻ってきてますね。クラシックだけが好きだったわけじゃなくて、子供の頃からの流れでピアノを続けていて、その中でいろんな音楽が好きになったし、やりたいことをやってるっていう感じですね。
―ソロ活動をしていた時期もあったんですよね。
森:シンガーソングライターとして一人で弾き語りしてました。その中でバンドをやりたい気持ちはあって。でも「バンド編成でライブやれたらいいな」っていう程度だったので、バックバンドで弾いてくれる人いないかなって知り合いに相談したら内田(Ba.)を紹介してもらって。それで彼がバックで弾いてくれてたんです。もともと内田と三輪は同じバンドをやっていたんですけど、そのバンドは解散が決まってたんで、内田が一緒に組もうって誘ってくれて、この3人になりました。
―バックバンドでいいかなっていう気持ちから、バンドをやろうっていう気持ちに変わったきっかけはあったんですか?
森:ソロをやる前にギターボーカルでバンドを組んでたんですけど、上手くいかなくてバンドなんていいやっていう気持ちになってたんです。だから内田に誘われた時もすぐには乗り気にならなくて「私はソロでやっていくって決めてるし」って思ってたけど。とりあえずスタジオ入ってみて、このメンバーだったらやってみたいなって思いました。バンドやるならこれが最後だっていう気持ちで始めましたね。
―このメンバーだったらやってみたい、と思えたポイントはどこにあったんでしょうか。
森:やっぱり、演奏しててワクワクしたからですかね。音を合せるのが楽しかったんです。
―内田さんが森さんをボーカルに誘った理由はどこにありますか。
内田:三輪とやってたバンドの解散が決まってから、1年半くらいひとりでベーシストとしていろんなサポートをしてて、その中で森のバックバンドもやってたんですけど。(サポートよりも)バンドの方が楽しいなっていう気持ちはあって。その中で、森を見てると「シンガーソングライターとしてバックバンドを付けてやるより、バンドのボーカリストとしてやったほうがカッコいいんじゃないかな」って思えて。それで軽い気持ちで誘ったのが最初でしたね。
―そうなんですね、それで合わせていくうちに形になって?
内田:でも、鍵盤のいるバンドがど真ん中で好きっていう3人ではなかったから、最初は割とひっちゃかめっちゃかだったよね(笑)。
森:私も、昔からやってたからピアノっていうだけで、ピアノのバンドが特別好きっていうわけじゃなかったから(笑)。
内田:スタジオの段階ではギターもいたんですけど、仕事の都合で活動できなくなって、でもライブ決まってるし3人でやろうかっていう感じで、結構なりゆきでこうなりました(笑)。ピアノロックがしたいから組んだ、っていう訳じゃなかったんですよね。
―そうだったんですか(笑)。ソロからバンドに変わると、曲の作り方も変わるんじゃないかなと思ったんですが、そのあたりはどうですか?
森:それは本当にそうですね。1人で作ってそれを弾いてもらうっていう感じだったんですけど。今は内田も曲を作るので、自分の中から出てくるものじゃないっていうのが違和感だったというか、人が作ったものを自分の歌にするっていうのに少し時間がかかったんです。今は自然とうまくバランスが取れるようになったというか、すごく面白いなと思えるようになりました。三輪はラウドロックが大好きで、ジャンルの全く違うドラマーなので、私が作ったものに全く要素が入ってくるのが面白いなと思いますね。
―アルバム『Life is Wonderful』について教えてください。全体的に希望を感じる曲が多くて、アルバムタイトルがまさにこの作品を言い表しているなと思いました。このタイトルに込めた思いや理由はありますか?
森:前作(『organism』)はこんなにポジティブではなくて、葛藤の中から生まれる感情を歌ってたんですけど、めちゃくちゃたくさんライブをしたりツアーを回ったりして、いろんな経験をした中で、それでも人生って素晴らしいなって言える心境になれたというか。根本的に、「超明るいポップバンド」っていうタイプではなくて、暗い要素もあるんですけど、いろんな経験をした中で、それでも前にむいて自分次第で人生を素晴らしいものにしていこうじゃないかっていう気持ちが歌えるようになりました。最終的にはポジティブなメッセージ性の曲が多いと思うけど、その中では葛藤したり別れがあったりして、でも最終的には光に向かっていくっていう。もっと前だったらこんなタイトル付けられなかったと思うんですけど。
―ネガティブなことを認めたうえで希望を歌っている、っていうのは感じますね。“未完成ワールド”っていう曲は、未完成っていう言葉が前向きに聴こえる不思議さがあります。
内田:そもそも、なぜ『Life is Wonderful』なのかっていうところで。希望とか光は相対的に生まれるものだと僕らは思っていて、最終的にはポジティブなメッセージでも、相対的に光じゃないものがあるからそれを光に感じるっていう大前提があるんです。“未完成ワールド”っていう曲も、最終的にみんな最後は死んじゃうっていう、あまりポジティブじゃない解釈が前提にある曲で。だからこそ今頑張らなきゃって思えることが光だっていう感じで歌詞を書きました。
―いろんな経験をしてこういう曲が歌えるようになったって仰ったんですが、それが表れてる歌詞とかフレーズってありますか?
内田:“グッドナイター”って曲は、去年おじいちゃんが亡くなって、おばあちゃんが「夢でもいいから会えたらな」ってつぶやいてて、そういう経験から出来た歌ですね。
森:“光を探しに”っていう曲は私が書いたんですけど、戦争の映画とか話とかを受けて、そういうどん底な経験をしても絶対にあきらめないで進んでいけば必ず光はあるよっていう思いで作ったんです。今も、どうしようもなくしんどい経験をしてる方もいるじゃないですか。本当に今が最悪な状況でも、乗り越えたらその先に絶対、「ご飯がおいしい」とか「友達に再会できた」とか、微かであっても光はあるから進んでいって欲しいなっていう曲ですね。光を探しに行こうって連呼してるし、すごくポジティブな曲ですねって言われることもあるけど、それを作った背景としては、どん底から這い上がって行こうっていう思いがある曲です。
―今回、“Don’t Stop The Music”が名古屋グランパスのオフィシャルサポートソングとなっていますね。内田さんはずっとサッカーをされていたと聞いたんですが、音楽を通じて再びサッカーに関われてるっていうのは、どんな気持ちですか?
内田:小学校2年生から高校2年生ぐらいまで名古屋グランパスユースにずっといて、音楽やりたいから辞めます!っていう感じで急に辞めてきちゃったんです。今回のオフィシャルサポートソングをやらさせて頂くことに関しては、あんな辞め方をした俺をよく迎え入れてくれたなっていう頭が上がらない気持ちです。サッカーを3歳からやっていて勢いとノリで辞めちゃって、ずっと心の隅っこの方がもやもやしてて、そのまま音楽をやってて。それが、こういう形で再び繋がることが出来てスッキリしました。昔の自分も認めてもらえたような気持ちがあるというか。
森:今回このお話をいただいて、初めて観戦に行ったんです。めっちゃ興奮しちゃって「スポーツ観戦ってこんなにいいもんなんだね!」って言いながら(笑)。その、初めて観た試合がサンフレッチェ広島対名古屋グランパスだったんですよ。
三輪:内田に解説してもらいながら(笑)。
内田:俺は試合が観たいから解説したくないんだけど(笑)。
―そうだったんですね(笑)。サッカーを通じてQaijffを知ってくれる人もいるんじゃないですか?
森:そうですね。それこそMVに名古屋グランパスの選手やサポーターさんに出てもらったり、マスコットのグランパスくんも協力してくれたりで、最初の段階から一緒に盛り上げましょうっていう形でやらせていただいたので、サポーターさんもライブに遊びに来てくれるようになったり。すごくありがたいです。
―嬉しいループですよね。Qaijffの音楽は、歌詞が誰にでもあてはまるというか限定的じゃない気がするんですが、バンドとして歌っていきたいテーマってありますか?
内田:テーマが特にあるわけじゃないんですけど。僕はソングライターだけどシンガーではないから歌ってもらわないと完成しない面があって。森彩乃っていうボーカルに対する言葉選びとかメロディーラインとかテンポとか、すごく考えて作ってるんですよ。だけど、自分が感じたことのない感情っていうのは書けなくて、最終的に自分らしくなっちゃうんですよね。だから、目の前にいる君に対してどうなのかっていうことなんでしょうね、きっと。結果的に、自分が作る曲はそういう曲が多くなってるかもしれないです。
―近くにいる誰かに対して歌っているっていうのはすごく感じました。
内田:プログレッシブ・ピアノポップバンドっていう、割と矛盾したプロフィールなんですけど(笑)。ポップと言われようがロックと言われようがどっちでもいいし、大衆音楽だと言われてもコアだと言われても気にならなくて。自分達がかっこいいと思う音楽をやった上で、自分達が何を背負っていくかっていうことで、敢えてそういう矛盾を作ってる部分があるんです。
―すごく気になるキーワードだなとは思ってたんですが(笑)、そうだったんですね。これからも経験値を重ねて歌えることが増えていくかもしれないですね。今後も楽しみにしています。
全員:ありがとうございます!
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