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空きっ腹に酒

  • nishi-kaze
  • 2016年8月14日
  • 読了時間: 3分

夢で見た幸せ対バンTOUR

 2016.8.14 @4.14

Report:Miyaco/Photo:MiNORU OBARA

序盤はツアー初日という緊張感が満ちていたが、それが彼ら自身の手でどんどん熱され、渦を巻きながら上昇気流に乗り、あの場の全てを飲み込みながら一体感と終盤の大爆発を生んだ。ライブって「やってみないとわからないもの」だから、事前に用意したシナリオ通りに創り上げるというのは難しいはずで、彼らが思い描く理想があの日叶ったのかどうかさっぱり分からない(そもそも理想のライブ像があるのかどうかも私は知らない)。けれど、期待も想像もはるかに超えた、誰の手にも負えないほど躍動したラストシーンを迎えたことは間違いなかった。

ライブ序盤はメンバーの表情は引き締まっていて、オーディエンスもそれを受けて少し硬くなっていたかもしれない。田中幸輝(vo.)の右手がフロアに向かって伸びると、会場の空気を握り掴もうとしているように見えて、こちらの意識も彼らにますます集中してしまう。"ALC"辺りから4人の表情にも少し余裕が見え始め、フロアの揺れ方にも自由度が増してきた。徐々に、確実に、フロアとの距離が縮まっているのがわかる。"ミラーボールロマンス"の演奏が非常にタイトで、再び空気がグッと締まった。激しく点滅する赤い照明がテンションに拍車をかける。

続く"Pa"では、この日のゲストであるORESKABANDのSAKI(Trumpet)、HAYAMI(Trombone)、ADD(Saxphone)をステージに呼び込んでコラボレーション。元気いっぱいの女の子3人に触発され、空きっ腹メンバーの演奏にも熱が入る。ホーン隊のソロ演奏で一層ムードとパワーが増した"Pa"にフロアも思い切り手を挙げて応えた。"夜のベイビー"で田中はフリースタイルのラップを披露し、オーディエンスは各々のやり方で音を楽しんだ。その自由さがグルーヴを加速させ、田中に「しあわせです」と言わしめたのかもしれない。

この時点で会場の盛り上がりはピークだったが、アンコールがこの空気を大きく超えた。田中はMCで、ライブハウスで音楽を鳴らすこと、自分たちが音楽を鳴らし続けることへの想いを語ったが、話しながら彼自身の心に火が点いたようだった。メンバー紹介では、残念ながらこの日ステージに立てなかったシンディー(Ba.)の名前もしっかりと呼んだ。そこからのラスト2曲は、冷静さや思考が一切無視されてこの瞬間の感情だけが4人を支配したような、はちゃめちゃでワガママで痺れる演奏だった。

こういうライブが見たかった、と思った。音楽が現場の熱に煽られて超立体的にうねる姿を目の当たりにするとき、私たちはライブハウスで鳴らされる音楽に心底興奮するのだと、この日の彼らに思い知らされた。

【set List】

 1.音楽と才能

 2.夢の裾

 3.ALC

 4.宇宙で独り

 5.ブス

 6.ミラーボールロマンス

 7.Pa

 8.青にかまけて

 9. 夜のベイビー

 Encore

  10.正常な脳

  11.元旦

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